よこしまちゃんぶろぐ

自己顕示欲ビンビン丸

いつかお前も俺を食うんだよ

レビューしようと思っても書きたい言葉が見つからない映画がたまにある。それはつまらなかったからというわけではなくて寧ろ物凄く強烈な映画だからという理由なんだけれど、この映画もその一つ。

『鉄男』シリーズなどの塚本晋也監督作!映画『野火』予告編 - YouTube

塚本晋也の作品って前衛的であまり得意じゃないんだけど、この映画は本当に出会って良かった。出来ればもう二度と観たくない、と思う程の作品に出会えて良かったと思える1時間半だった。

多分もっと、心に浮かんでいる何かを書き出したいはずなんだけれど私にはこの映画の感想を綺麗に言語化して並べるまでのセンテンスやボキャブラリーを持ち合わせていない。即座に「どんな映画だった?」と聞かれても絶対に「ヤバかった」とか「怖い、グロかった」とか、そんな貧相な言葉しか思い浮かばないくらい。いくら心の中に鮮烈に残ったとしてその気持ちを気持ちの中だけで大きく膨らませても言語化出来なければそれは感想とは呼べない。だからそういう時はどこかの媒体に書き残すことはやめてしまうんだけれど、鑑賞後に出演していた若手俳優さんのインタビューを読んで「自由に捉えて心に残ったものを何かに書き起こしたり吐き出して欲しい映画」だと言っていたのを見て、この映画は見終わった直後に羅列でも支離滅裂でもいいから記録しておくことに意味があるのかもしれないと思った。無知なりに感じたことを書いておこうと思う。

 

私、実は史実映画が得意じゃない。物凄く。というのも今生きてる現代から遠くかけ離れた時代やそこで生きる人々の姿を見ても感情移入していけないから。どうしても感情移入出来るかどうかで作品の好き嫌いを判断してしまうところがあるので、軍隊ものなんかは小さい頃からなかなか馴染めない。そして何より自分の無知さでは歴史上のことを理解も読解も出来ない事が多い。そういう訳だから戦争映画を含めた史実映画には滅多に触れないのだけれど、「野火」に関しては私が好きな川越スカラ座(明治時代から続く老舗の映画館)があって、そこで長期上演されていて評判が良かったのでずっと気になっていた作品ではあった。

それで昨日やっとレンタルをしてきたので、原作は未読のまま「フィリピン戦下で飢餓状態になった兵士が食糧を求め続けて人肉嗜食に行き着く」という予備知識のあらすじのみ押さえて鑑賞。

入院中にツタヤに通い過ぎて観たい物を見尽くしてしまったからと「ソウ」の全シリーズを無駄に制覇した時、自分は中身の無いサイコスリラーだとかグロテスク映画に対してはなんの恐怖も感じないという事が判明したので凄惨な描写にはそこそこ耐性がある方だと思いこんでいた。だけどこの映画は画面を通して精神的にも肉体的にも衰弱していく兵士たちの極限状態を超えたその先の異常な言動を、まるで目の前で目の当たりにしている気分になってしまって鑑賞しながらだいぶ気が滅入ってしまった。体感型戦争映画のようだった。

 

首を撃たれ叫び声が出ないほど噴き出る血

腐敗していく皮膚に虫が湧き出る身体

死体から飛び出る臓器や脳みそ

えぐるようにそれに喰らいつく人間

生き延びれば生き延びるほど異常さを増していく人間の極限に達した なんの罪もない人間たち

 

1時間半しかない本編を何度か「観るのもうやめようかなぁ」と思ったくらい気力を使った一本だった。大層大げさな表現だなと思われそうだけど、ネットの感想にも同じようなことが沢山書かれているのでそれほど誰が見ても衝撃を受けるものであることは確か。

この事実が過去の日本にあったという現実を今この時代の、残飯が山ほど捨てられていく恵まれた暮らしの中で知ると余計に凄惨に思えてくる。

 

戦争で亡くなった兵士の6割は飢餓による餓死で、当時は食糧不足のあまり兵士たちが友軍を殺し合ってそれを食べることは日常的に行われていてたので敵軍より味方の方が警戒しなくてはならないほどに皆飢えに苦しむ生活を強いられていたらしい。

 

この映画は戦争時代の勇敢な兵士の生き様を美談的に描くものとは全く正反対に、戦争が人を苦しめ互いを殺しあうまでになってしまった悲惨な事実だけをただただ絶望的に映し出したもの。苦しい生活の中でも希望を見出せる作品よりも「いかに人々を絶望へ堕とし入れるものなのか」それだけに焦点を当てた作品こそが「戦争を伝える映画」なのかもしれない。

戦争に希望を見出しちゃいけないと改めて思わされる作品。

取り戻せないものを壊してしまうものでしかない。取り戻せないものを自ら壊しにいかざるを得なくなってしまうものでしかない。

「野火」には誰1人として幸せな人は出てこなかった。

 

 

〜〜

 

 

塚本晋也監督の代表作「鉄男」の良さは全く理解できなかった私だが、メンヘラの教組・Coccoが主演の母親の葛藤を描いたこの作品は物凄く好きなので、ママとの間に悩みを抱えるメンヘラどもは是非観てくれ

映画『KOTOKO』予告編 - YouTube